ゴードン・ベル(Gordon Bell)「ハイテク・ベンチャーを始めるプログラム」の和訳

Webjidai5tsunoteiri_2  先日、梅田望夫さんの「ウェブ時代 5つの定理」を読んで、シリコンバレーの”ベンチャー魂”を再発見した思いがし、ちょっとすっきりしました。この本の冒頭の第1定理「アントレプレナーシップ」の最初のページで、梅田さんが師と仰ぐゴードン・ベルプログラム記述形式の「ハイテク・ベンチャーを始める手順」の一部が引用されていて、時間ができたら、一度、全部を見てみたいと思っていましたが、ちょうどゴールデン・ウィークに入ったので、プログラミング・テイストを残したままの和訳に挑戦してみました。
 ゴードン・ベルは私にとっても印象深い人です。1984年にNECのソフトウェア生産技術研究所に入った時のプログラミング環境はゴードン・ベルが開発したミニコンのPDPやVAXでしたし、大学時代からの私の技術的な専門分野は「並列コンピューター開発」で、後にシリコンバレーにあるスタンフォード大学に留学させてもらった1992年頃には、優秀な並列コンピューティング研究開発を賞賛するゴードン・ベル賞 (IEEE Gordon Bell Prize) が設立された直後だったので、私にとってもゴードン・ベルという人は「コンピュータの神様」として頭に刻まれています。
 能書きが長くなりましたが、ゴードン・ベルの「ハイテクベンチャー: 起業成功ガイド( HIGH-TECH VENTURES: THE GUIDE FOR ENTREPRENEURIAL SUCCESS )」(1991年)から「ハイテク・ベンチャーを始めるプログラム」の"要約版"と"詳細版"を和訳してみました(原文にも2つが掲載されていますが、2つは微妙に違います)。特に、詳細版は、4つの会社成長段階別に記載されていまして、梅田さんの本でも紹介されていた"Bell-Mason Model"と一緒に眺めると、さらに理解が深まるような気がします(梅田さんの「CEOとマネージメントチーム」というページでも日本語で詳しく説明されていますね)。

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【 要約版: ハイテク・ベンチャーを始めるプログラム 】 Text File
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if フラストレーション > 報酬
     and 欲 > 恐れ
     and 新しい技術や製品が可能 then
begin
     exit(仕事);
     get(ビジネスプランを書くツール);
     write(ビジネスプラン);
     get(ベンチャーキャピタル);
     start(新会社);
     get(事務所、人、製品開発ツール、UNIXライセンス);
     sell(製品アイデア); design(製品);
     market&sell&produce(製品);
     while 新会社が儲からない then wait;
     get(もっと金);
     sell(新会社);
     リタイヤして;
     wait;
     restart;
     if もう一度起業したい then
          start(他のハイテク・ベンチャー会社);
     else
          start(新ベンチャーキャピタル会社);
end;

【後日談】 この記事を書き終わって数時間以内に、梅田望夫さん自身に発見いただき、「My Life Between Silicon Valley and Japan」のブログ記事でも紹介していただきました。おかげで、この記事自身、ずいぶんたくさんの人に読んでもらうことができました。

………<詳細版はこの後に続く>………

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【 詳細版: ハイテク・ベンチャーを始めるプログラム 】 Text File
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if 技術/製品/サービス会社のアイデアがある
     and フラストレーション > 現在の仕事の計画での報酬
     and 欲 > スタートアップの失敗の痛み
     and スタートアップへの財務的・情緒的サポートがある then
begin

I. Concept stage:

     exit(仕事); find(チーム);
     get(スプレッドシート・ツール); write(計画); find(投資家);
     if 計画がローリスク then
          go to Product development stage;

II. Seed stage:

     exchange(友人とベンチャーキャピタリストの金を会社の株に);
     recruit(スタートアップチームのスーパースター);
     while 事業計画通りに進んでいる and 金が銀行にある do
     begin
          verify(技術, 製品, 市場, ビジネス);
          refine(計画);
          if Seed stage が完了 and 計画が依然よい then
               go to Product development stage;
     end;
     /* if 金が尽きた or 計画が失敗した */
     if 会社に成長可能性あり and 投資家がその気である then
          continue Seed stage;
     else
          sell(会社) or close(会社);

III. Product development stage:

     exchange(投資家からの金を会社の株に);
     recruit(開発チームのスーパースター);
     get(事業所, 開発ツール, ソフトウェアライセンス);
     while 事業計画通りに進んでいる and 金が銀行にある do
     begin
          sell(製品アイデア); specify(製品);
          develop(製品);                   /* 市場適合 */
          build(最初の製品のプロトタイプ);/* 再生産可 */
          test(製品, 内部向け);           /* αテスト */
          manufacture(最初の製品);    /* 生産開始 */
          test(製品, 外部向け);           /* βテスト */
          announce(製品);
          go to Market development stage;
     end;
     if 会社に成長可能性あり and 投資家がその気である then
          continue Product development stage;
     else
          sell(会社) or close(会社);

Iv. Market development stage:

     exchange(投資家からの金を会社の株に);
     recruit(営業チームのスーパースター);
     while 金が銀行にある do
     begin
          sell(製品); produce(製品);
          deliver(製品);          /* ビジネスサイクル */
          if 会社が6四半期 利益が出ている then
               go to Steady-state stage;
     end;
     if 会社に成長可能性あり and 投資家がその気である then
          continue Market development stage;
     else
          sell(会社) or close(会社);

V. Steady-state stage: /* Exit and cash in */

     sell(会社を、売上の20倍の価格で、株式公開か企業買収で);
     continue(会社);
     retire and return(起業家);
     if 起業に飽きていない then
          start(次の会社);
     else
          go to ベンチャーキャピタル会社;

end;

カテゴリー: ウェブ・マーケティング, ウェブ・技術, 書籍, 科学 パーマリンク

ゴードン・ベル(Gordon Bell)「ハイテク・ベンチャーを始めるプログラム」の和訳 への6件のフィードバック

  1. デジタルな広告たち のコメント:

    オバマ氏は Facebook/YouTube/MySpace をフル活用して150万人から献金を集める

    オバマ氏の公式サイトからの様々なWeb2.0系サイトへのリンク(Obama Everywhere)と、そこからリンクされているそれぞれのサイト(Facebook, YouTube, MySpace, Flickr, Digg, LinkedIn等)での支持者との接触度合いの徹底が凄すぎます。…

  2. デジタルな広告たち のコメント:

    Video Podcast で毎日、米国メジャーTV局のニュースをチェックしています

    「百聞は一見にしかず」といいますが、Video iPod を購入して1ヶ月半ほど、Video Podcast で米国メジャーTV局ABC,CBS,CNNのニュースをチェックしていると、すごい世の中になったなぁと関心します。日本でも、放送と通信の融合なんかの話がちょろちょろと話題になりますが、海の向こうでは四の五の言わずに、TVニュースの内容を Podcast専用に編集したり、Video iPod用のキャスターを用意したりして、すでに定常的に毎日Video Podcastingをしています。

  3. [経営]創業にいたるまでのソースコード公開というOSS

    http://hiroya.lekumo.biz/blog/2008/05/gordon-bell-643.html ゴードン・ベル(Gordon Bell)「ハイテク・ベンチャーを始めるプログラム」の和訳 面白い。 【 要約版: ハイテク・ベンチャーを始めるプログラム 】 Text File if フラストレーション 報酬 and 欲 #…

  4. デジタルな広告たち のコメント:

    青山学院大学・岩井教授をお招きしMBA向け経営ゲームを実施

    先週、サイバーウィング社に青山学院大学大学院国際マネジメント研究科 岩井教授をお招きし、インターネットを活用して短時間でできるマネージメント・ゲームを実施していただきました。…

  5. Entrepreneurshipを探る旅 のコメント:

    最後はやっぱりシリアルアントレプレナーかVCなのか?!

    広屋修一さんの「デジタルな広告たち」というブログのエントリー「ゴードン・ベル(Gordon Bell)「ハイテク・ベンチャーを始めるプログラム」の和訳」が梅田望夫さんのブログで紹介されていたので覗いてみた。
    最後の部分を見ると、「シリアルアントレプレナー(連続企業家)」になるか、「ベンチャーキャピタル」になるかというところに行き着いている。V. Steady-state stage: /* Exit and cash in */
    sell(会社を、売上の20倍の価格で、株式公開…

  6. TAROUの頭の中の記録 のコメント:

    ハイテク・ベンチャーを始めるプログラム

    「デジタルな広告たち」というブログで、Gordon Bell(ゴードン・ベル)の

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