先日大阪の実家に寄った際に、一昨年亡くなった父の本棚から、40年前に発行された「汽車会社蒸気機関車製造史」という本を持ち帰った。「汽車会社」は、鉄道の父「井上勝」が鉄道庁長官を退官後、1896年に大阪に設立した国産鉄道車両メーカーで、この本が発行された1972年に川崎重工と合併するまでの70年以上にわたり、数々の機関車・車両を製造してきたメーカーである。父はSLファンではなく、汽車会社の社員だった。消えゆくJR関西線のSLを追いかけていたのは、父ではなく私の方だった。だから、ある日、父がこの本を家に持ち帰った時も、それが貴重な本であることはすぐにわかった。この本を最後に見たのは中高生ぐらいだったと思うので、この本に出会ったのは数十年ぶりということになる。
この本にはたくさんの蒸気機関車や貴重な客車の写真や図面の他に、当時の工場の様子等も載せられている。その写真を見て、一度、父に電車の製造工場に連れていってもらったことを思い出した。大きな電車のボディーがクレーンでつるされていて、それが電車の台車の上に降りてきたかと思うと、溶接が始まり火花が散る。ああいうちょっと危険で凄い光景を子供が見られたのも当時だからできたのかもしれない。
数十年ぶりに本を読み込んでみて、新たな発見もあった。機関車や客車以外にバスや戦車を作っていたのは当時も意外だったので気がついていたが、実は結構たくさんの「橋」も作っていたようで、うちの近所の隅田川にかかる「駒形橋」も汽車会社が製造したというのには驚いた。
この本、保存状態もたいへんよく、これからも大事に保管して、またしばらくして、じっくり読んでみたいと思う。